Time Paradox
ジャックはリリアーナに駆け寄ると、自分の方へと引っ張った。
リリアーナも自分からジャックの懐へと飛び込む。

2人は野次馬を掻き分けて外に出ようとしたが、取り囲む野次馬はさっきよりも増えていた。

そしてさっきまでは居なかったはずの警備員や武装兵まで駆け付けてしまっている。

そして大学生達は極めて愉快そうに笑うと、人集りの中心までやって来た武装兵に2人を渡した。

武装兵は2人に手錠を掛け、店の外に停めてあった城の車まで乱暴に連れて行った。

大学生に対しては、まるで外国から来た大使館か何かに接するような態度で車に乗せた。

2人は車の中で武装兵に囲まれて座り、終始無言だった。


そして城に着くとすぐ、誰よりもリリアーナの発見を喜ぶマーカス・ナトリーの所へ面会に行くことになった。

長い廊下を歩き、一際豪華な大きい扉が見えてくる。

すると遠くから、その扉を開けて部屋を出る2人の男の姿が見えた。

その2人の男はリリアーナのよく知る人物、アドルフと家庭教師のルイスだった。

ルイスは頭が固く、何でも自分の思い通りにならなければ気が済まない人物だった。
だが自分よりも上の者へのゴマすりを得意としているため、この城で長いこと生き残ることが出来たのだろう。


アドルフはリリアーナの方に気が付くと、はっと息を飲み込んで何かを言いかけたが、ルイスの冷たい視線に気付いたのか、下を向いてしまった。

そしてリリアーナとジャックを引き連れて歩く武装兵は、アドルフと目が合うと皆、深くお辞儀をした。

リリアーナはアドルフの方へ視線を送ると、彼も挨拶代わりに目線だけをこちらに向けた。


それからそう歩かずに、一行は大きな扉の前に辿り着いてしまった。

武装兵の1人が深呼吸をし、ノックをする。


もうどうにもならない。

リリアーナは覚悟を決めた。
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