Time Paradox
「…あれ?」

リリアーナは何も考えずにジャックの方を見ていたが、ふとある事に気が付いた。


「…今思ったんだけど、ジャックは身一つでここに来たのに持ち帰る物なんてあるの?」

「あ、言ってなかったっけ?俺と父さんはここで働いてたんだよ。」

「えぇっ⁈」

「まぁリリアーナが知ってるはずないだろうな。そんなに長く勤めてなかったし、たくさんの使用人のうちの1人って感じだったから。」

「…へぇえ。それでその時の荷物もまとめて持って帰るのか!…ん?でもどうしてその時に持ち帰らなかったの?」

ちょうど荷物を詰め終わったのか、ジャックはカバンのファスナーを閉めてからリリアーナの方に向き直り、言いにくそうに口を開いた。

「…いや、ここを辞めたのがちょうどあの日だったんだよ。」

「…どういうこと?」

リリアーナは怪訝そうな顔で聞き返した。


ジャックは荷物を床に置くと、そばにあった椅子に腰掛けて話し始めた。
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