だから、俺の彼女になってよ。
「その吐き出す相手、俺がやってやるよ。俺がお前の味方になってやる」
そう言う本人は、あくまで無表情。
けど、何故かすごく優しい声に聞こえる。
私の手を引っ張り、手のひらにその紙を握らせると、一瞬、彼の手が私の髪に触れた。
「無理だけはすんなよ」
それだけを言い残すと、すぐにこの場を立ち去って行ってしまう。
シン、と静まり返った教室に、1人取り残された。
ゆっくりと、今言われた言葉を頭の中で繰り返す。
紙を握らされた手を、そっと開いた。
「……これって」
そこには、男の子にしては綺麗な字が並んでいて。
【 080-xxxx-xxxx
黒川千歳 】
その紙には、黒川千歳 (くろかわちとせ) という名前と、電話番号だけが書き込まれていた。