先輩に溺愛されて
さっと用意をして、家を出る。
「いってらっしゃい!」
...
――ガチャ
雲ひとつない快晴。
登校ラッシュを過ぎたため辺りには誰一人いない。
ハァー
まったく朝からうるせえおばさんだよ。
世の中の母親ってみんなああなのか?
そんな悪態をつきながらゆっくり学校へ足を運ぶ。
途中、ガラの悪い連中に絡まれながらも、喧嘩をする気にもなれなくて適当にあしらった。
そんなことをしながらも学校の校門が見えてきた。
―――ヒラッ
.,.なんだ?
見るとそこには桜の花びらが。
それから気がつくと辺り一面、桜の花びらのじゅうたんができていた。
―――!!
しかしそんなことはどうでもよかった。
目の前にいる少女を視界に捉えてからは。
長い黒髪をなびかせ、桜を見上げている。
「きれい...」
それはとても小さくて、とても澄んだ声だった。
遠くからでも見える、きれいな横顔。
そしてその口から発された声。
...それは、俺の鼓動を早くさせるには十分だった。