囚われた檻〜白昼夢〜【短編】
♯1
広い大学の中にある、一つの部屋。
窓の外はもう茜色で、50席ほどある教室には俺だけだった。
「ジュンタ」
聞き慣れた声が、俺の耳をくすぐる。
綿菓子のように甘く、ふわふわした独特の声が。
顔を見なくても、相手が分かった。
――待ってたのか、アイツ。
嬉しくて、かわいくて。
それだけで、口元が緩んでしまう。
扉の方へ振り向くと、予想通り彼女がいた。