花のころ
「……おはよっ」
すれ違う手前で顔を向けて、精一杯のあいさつ。
あたしの方を向いていた友達も、振り返り、彼に気づいた。
「おはよ~」
「…おぅ」
眠そうな様子の彼は、軽く手を挙げてこっちを見た。
そのまま通り過ぎると思ったのに、少し寄って話し出した。
「……テカ、なんでわざわざ?」
『なんで?!何に対してのわざわざ!?あたしの気持ちなんてバレてるはず無いのにっ……???』
動揺して、「え??」って表情しか出来ていないあたしに、彼が言う。
「自販機…俺らの階にもあんじゃん。」
…確かに、あたし達の教室の階にもある。
どうして1階まで来たかが不思議だったのか…
あたしの行動の、本当の所がバレていたわけじゃなくて安心した。
「あ!あ~うん…
これ、このココア上に無いのっ」
「だっけか?ココアなんて冬しか飲まねーからなぁ…」
あたしのとっさの言い訳に半分納得したような彼は、階段を上がっていった。