君の居た世界
「千尋ー?起きてるー?遅刻するよー?転校初日から遅刻なんて笑い者よー?」



午前7時。


リビングから母親の叫ぶ声が聞こえる。


(やべぇ。目覚ましかけ忘れてた。)


なんてのんきに起き上がり



「今起きた。先に朝飯用意しといてくんない?」


「もう!マイペースなんだから!
母さん今日パート入ってるから帰り遅くなるからね!ご飯とか自分で準備するのよー?!あれ?!千尋って家事出来たっけ?!」


のそのそと身支度を整えた後リビングに向かい、1人でマシンガントークを繰り広げている母親を見て今日のツッコミ所を探す。これはそそっかしい母親のための俺の日課だ。



「別に人並みにはできるつもりだけど。
あ、朝飯ありがと。それと、俺はまだ平気だけど母さん時間いいわけ?なんで着替えて髪とかの準備終わってるのに化粧だけしてないの?今日はスッピンデー?」



ダダダダと洗面台へ走り鏡を見て
案の定母さんは絶叫した。


「ああ!し終わったつもりだった!
ありがとう千尋!時間…ない!今日はスッピンで行く!千尋、家のことよろしくね!いってきまーーす!」





(………疲れた。)



離婚をして引っ越しても
この日常は変わらないだろう。


その日常は恐らく学校生活も変わらない。


俺の青春アイテムなんて
漫画とか本だけで充分だ。




(次の転校先でも静かに生きよう。)



1人で決心をし、食べ終えた食器を片付け、歯を磨き、俺は誰もいない家を出る。




「いってきます。」










これからの俺の在り方を、人生を
変えてしまう出会いがあるとも知らずに。








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