君の居た世界
キョロキョロと歩きながら
歌声の主を探す。



(この辺から聞こえたんだけどな…。
あ、あの子……か……。)




歌声の主は俺と同い年くらいの
儚げな雰囲気を纏う女の子。



何故だか凄く……惹かれた。



特別美人とか特別目立つとか…
そういう在り来たりなヒロインタイプではない。本当に普通に可愛い感じの女の子。


(まぁ、言ってる俺もフツメンだが。)




夕焼け色に染まる海と
チェリーピンク色の空。




砂浜を制服で、裸足で歩きながら
歌っているその子に不思議なくらい惹かれた。






その子が歌う歌は俺も知ってる
少し悲しい感じの歌だった。




歌に聞き入りすぎたのか見つめすぎていた俺の視線に気が付いた女の子は微笑んで




「君、今朝の噂の転校生だよね?
私ね、同じ学校の蒼井りな。クラスは違うけどね!よろしくね!灰川君!」



と俺に言った。




俺はただなんとなく
今このチャンスを逃したら
友達ポジションすらなれないと思った。



後々考えてみればそれはそうだ。
クラスが違うんだから話す機会はそうそう無い。




けど、この時の俺は
どうにかこの子の視界に入りたくて、
俺の存在を意識してもらいたくて、




めったに友達を作らない俺は勿論
こう言った。









「恋人になることを前提に友達になってください。」















実に俺のキャラでは無いことを言った。










この日の就寝前
俺はこの日の出来事を思い出し
恥ずかしすぎて悶絶する事を
まだ知らない。






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