修羅は戯れに拳を振るう
電話から約一時間。

部屋のチャイムが鳴る。

莉々に代わって龍宇が応対に出ると。

「莉々」

玄関先に出た龍宇を押し退け、女性がズカズカと部屋の中に入ってきた。

頭頂部付近をシニヨンで留め、黒い後ろ髪をハラリと流した女性。

身に付けているのは鳳凰の刺繍が施された白地のチャイナドレス。

まだ30代にも見えるが、後で聞いた話だと既に孫もいる年齢だというのだから驚くしかない。

彼女は龍宇をまるっと無視して奥の部屋に向かい、ベッドに横になる莉々に近付く。

開口一番。

「馬鹿者め、幾らお前が強くとも相手は男、筋力も頑強さも女を上回る、それを忘れるなと教えただろうが」

女性は怪我人の莉々を説教し始めた。

気の強い莉々が。

「すみません、龍娘大先生」

素直に詫びる。

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