修羅は戯れに拳を振るう
「わかったら、いつまでもしみったれた顔をするな」

ドスッ、と。

龍宇の胸板に拳を打ち付ける龍娘。

松岡に受けたどの拳よりも、その拳は重く感じられた。

打撃力ではない。

早川 龍娘という武道家の歩んだ、人生の重み。

「…羨ましいですね、龍娘さんのお弟子さん方が」

龍宇は呟く。

「身近でこのような説法を聞かせて頂けるんですね」

「…何なら弟子入りするか?」

フッと笑う龍娘。

「じ、じゃあ私も弟子入りします!そして龍宇さんと毎日道場で、組んず解れつ寝技の稽古…」

莉々が妄想混じりに呟くが、彼女は道を踏み外し気味ではなかろうか。

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