修羅は戯れに拳を振るう
男性の案内で、龍宇と莉々はエレベーターに乗る。

高速エレベーターで本社ビルの屋上へ。

地上30階、目も眩むような高さのビルの天辺まで、僅か数秒。

到着した屋上は、強い風の吹く寒々とした場所だった。

広大なヘリポートと、ヘリを誘導する着陸誘導灯が点滅する屋上。

邪魔なものは一切ない、闘うに適した場所とも言えた。

が。

「いないじゃない、対戦相手」

莉々が男性に対してクレームを付ける。

「龍宇さんを待っているんじゃなかったの?」

「え、えーと…」

予想外の展開なのか。

男性はやや狼狽した。

「先日のカーニバル本戦で勝ち抜いた、ブラジル出身のMMA(mixed martial arts、総合格闘技)王者、ロドリオ・ロドリゲス様がこちらに到着されている筈なのですが…」

背広の胸ポケットから、スマホを取り出して連絡を取ろうとする男性。

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