修羅は戯れに拳を振るう
「貴様とは練功の年季が違う」

構えたまま、修羅は言う。

「虎撲烈波だけは、一朝一夕で身に付く技ではないのだ。殺しの数だけが、真の虎撲烈波を完成させる。貴様の言う甘っちょろい幻想では、我には打ち勝てん」

発勁とは発生させた勁(運動量)を対象に作用させる事である。

細かく言えば特定の方法(門派により異なる)にて発生させた勁を接触面まで導き、対象に作用させる事である。

それを実戦で活用するには、実際に場数を踏み、経験を重ねるしかない。

修羅の言う『殺しの数』も、あながち外れではない。

しかし。

「勁とは、内在する力」

龍宇は言う。

「勁とは、己の中に宿る力。己の中で練り上げ、己の中で発生する力。人を殺さずとも、勁は練り上げる事が出来る。修羅、お前の言い分は、殺しの為の言い訳に過ぎない」

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