修羅は戯れに拳を振るう
その街の一角、臨海工業地域。

煙突・配管・タンク群の並ぶ重厚で武骨な景色の中、二人の若者を囲んで多くのギャラリーが犇めき合っていた。

ここでもまた、格闘特区ならではの光景、ストリートファイトが繰り広げられている。

一人は力士なのだろうか。

浴衣に雪駄、まだ髷も結えていないザンバラ髪の、でっぷり肥えた男だ。

身長は2メートル近かろう。

こんな男と相対するのだ。

対戦相手もさぞや屈強な巨漢かと思いきや。

立っているのは少女だった。

どう見ても10代。

ロングの金髪、臍出しのウエイトレスのような衣装に身を包んだ、スレンダーな娘だった。

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