修羅は戯れに拳を振るう
次の瞬間。

「!?」

男の姿が消えた事に、三沢は驚愕する。

あれ程の巨躯を、見失う事など有り得ないというのに。

直後。

「死合の技というのはな」

頭上から声がした。

見上げると。

「このようなものをいうのだ」

黒い影に包まれた巨躯が、三沢に襲いかかる!

飛び上がって建物の壁を足場にし、相手の頭上から肘打ちをする三角飛び猿臂打(さんかくとびえんぴうち)!

脳天に硬く鍛え上げられた肘を打ち込まれ、肉体のタフさが売りのプロレスラーである三沢が、たったの一撃で昏倒する。

ダウンさせる為ではない。

殺す為の技。

まさしく殺人技。

しかし。

「チッ」

男は舌打ちする。

「まだ息がある…仕損じたか。一撃必殺には温いわ。修羅と呼ばれるこの俺が」

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