修羅は戯れに拳を振るう
人里離れた深山に住まい、仙人とも世捨て人とも言われた男。

熊のような巨体で吠えるような声で話し、その身に纏う気ゆえか、実際の身の丈以上に巨大に見える。

一人孤独に拳を追求してきたが、気紛れに捨てられていた龍宇を拾い、弟子に取った。

「師匠の指導は過酷を極めた。手取り足取り技を教えるなどという事はしてくれなかった。技は見て、食らって、体に刻み付ける事で習得していった。食事も与えられる事はなく、腹が減れば自分の食糧は自分で確保するしかない。そこで身に付けた技を使い、獲物を狩って食糧にした。鹿、兎、野鳥、猪、時には成獣になる前の熊まで…そういったやり取りで、どの程度力を加えれば生き物は死ぬのか、力加減を覚え、相手を倒すのに必要な技の威力というものを身に付けていった」

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