修羅は戯れに拳を振るう

龍宇の修行時代の話は、まさに過酷だった。

莉々や龍太郎の知っている修行というものとは、かけ離れている。

莉々や龍太郎が経験したのが武道の修行なら、龍宇が経験したのは『生きる為の術を身に付ける修行』。

他者の命を奪い、他者の命を糧として、生き延びる為の修行。

莉々達が身に付けている格闘技とは、一線を画するものだった。

「師匠は本当に強かった。人間を超越した強さというべきか…師匠の持つ技は、人間相手という枠組みですらなかった。どうやれば、素手で『相手』を倒す事が出来るか…その『相手』というのが、時には獣であったり、銃を持った兵士であったり。一対一という概念すら、なかったに違いない。素手で、己のみで生き延びる方法…それが師匠の技だった」