鬼部長の素顔



『麻耶先輩、白井さん。ご迷惑かけてごめんなさい』


そう頭を下げれば
部長はホッとしたような顔して
私に手を差し伸べてくる


いつもなら、その手を
無条件で掴むだろう


私は部長の前に立つ


『出張、お疲れ様。……おかえりなさい』


笑顔で言った……つもり
けど、やっぱり不安なのは出てしまう



「優子……悪かった」



別に謝って欲しいわけじゃない
ちゃんと話して欲しいんだ



『隼人さん、家族でも……隠し事はあっていいと思います。けどね、言わなきゃダメなことはあります。それを隼人さんじゃなく、他の人から聞かされた……私の気持ち、わかりますか?……私は……隼人さんの何ですか?』


私はあなたのなに?
言葉に出せば、目頭が熱い
泣きそうになる、口元をぎゅっと
結んで、それを阻止する
< 284 / 344 >

この作品をシェア

pagetop