鬼部長の素顔



みんなに押され、無理やり部長と向き合う


ははっ……と、
お互い苦笑い



けど、部長はコホンっと咳払いをし


「柿崎」


懐かしい響き……
入社してから、ずっと、ずっと
呼ばれる響きが大好きだった

今までのことが、思い出される



「今日まで、よく頑張った。今までたくさんの部下を教育してきた、いろんな意味で……お前が一番だった。どんなに怒鳴っても泣かない、俺の事を鬼といい……こりに懲りず何度も同じミス……」


次から次へと部長の口から
私の失態が出てくる


みんなはクスクス笑い始め
私は流していた涙もピタッと止まり
だんだん、恥ずかしくなってきた



『部長っ!!』


悪口とも捉えられる言葉を
やっと止まり、部長の口元が上がった


「……それでも、明日から柿崎がフロアにいないと思うと、寂しいのは確かだ」



うっ……なんなの、この鬼っ。


「柿崎が俺の部下でよかった」


そう言って、私の頭を撫ぜてくれた
< 306 / 344 >

この作品をシェア

pagetop