Tearstaind Karanchoe
あてられた席は、窓際の一番後ろ。
前は楓で、楓の隣は去年から仲のいい
“黒木 颯太”
という明るく、面白い奴。
そして、私は隣へと目を向ける。
刻一刻と、ゆっくりと。
けれども、確かに近づくその時が。
私には、どうしもうもなく怖くて。
すがるように桜を見ていれば。
開いた窓から風と共に運ばれた、甘くて切ないあの香り。
無条件に記憶のページはめくられていく。
刹那
ガタっと音を立てたイスと。
投げ出されたリュック。
心臓が早鐘を打ち鳴らす。
頭の隅で、赤い光が点滅する。