Tearstaind Karanchoe

まだぷりぷりとご立腹中の楓。

ぷうっとふくらまされた彼女の頬をつんつんつついて

『帰り、わんタッキー奢るよ?』

魔法の呪文を唱えれば。

ツインテールをふわりとゆらして、彼女はにっこり笑った。

前方に見えてきた白塗りの壁

ひときわ目立つ、桜の木

「わぁ。今年も立派に咲いたねぇ、自慢の桜」

楓が言う。

私たちの通う

“北部桜野高等学校”

街の外れの桜並木を抜けたところにあって。
校門を入って、すぐ右手。
駐輪場の前に咲き誇る、桜の大樹がシンボルマーク。

地元では、名の通った進学校であり、男女ともに桜を上品にあしらった小綺麗な制服は、とっても人気。

県外からも受験者が集まる、そんな高校だ。

そうして、クラス編成は。

1年生は入試の成績順に、A~E組に振り分けられて。
2年生は、2年の終わりの実力考査と、そこまでにつけられた内申点と。
照らし合わせて、シビアに分けられる。

2年と3年は持ち上がりだから、それはつまり。
今日、掲示板に貼りだされているだろう、クラス編成表。

そのメンバーと、華の高校生活の残りを送ることとなるのだ。
元々どっこいどっこいの成績で受験した私と楓。

2人そろって、去年はB組だった。

けれども、進学校。
されども、進学校。

…だから、進学校。

元来、おっとりとしている楓は、私が大好きな推理小説を読む時間にかける3分の1を捧げて。
勉強に励む間、趣味の雑貨屋さんめぐりに旅立っているのだから、まぁそういうこと。

っていうか、それでもそれだったら私の立場が滅される。

B組のトップを死守した私と、ものの見事に落下していく楓では、まさに月とスッポン。
一生のお願いよろしく、泣きついてきた楓。

現役大学生である私の兄の準と、楓のお兄ちゃんの遼。

3人でなんとか、正月を献上してひっぱりあげたけど。
スッポン楓の行方は知れない。

とはいうものの、実力考査で確かに感じた手応えばかりを、過信して。
クラスが落ちていたともなれば。

それこそ、一番の爆笑者。

準や遼兄はもちろん、弟の瞬や、妹の夕華。

一年間に渡ってふんぞり返り続けた私への風当たりは、きっとヤバイ。

てなわけで。

スッポン楓と月(仮)は、ドキドキしながら校門をくぐったのだ。


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