【短編集】独りな一人
長女の願い
パシッ
簡素な音が響く。やけに静寂を感じた。
叩かれた反動で体がよろめき、柱にぶつかった。
『いっつ……』
「85点?あんたふざけてんの!?
満点とらないなんてクズだわ!」
叩かれたのは私。叩いたのは母親。
「妹は体が弱いのにこんなに頑張ってるっていうのにね…あんたときたら…」
……ああうるさい。もうそれは聞き飽きた。
体が弱くても病院に通うってほどじゃない。
ダイエットとか言ってあまり物を食べないで免疫落ちて勝手に風邪引いたりしてるだけ。
自業自得じゃん。
それなのになんでいつも優遇されてんの?
なんで私はいつもこんな目にあうの?
「お母さん、今日50点だった!!」
「あら、すごいじゃない!!
数学苦手なのにね~えらいわ」
「えへへ」
どうしてあんたはそんなに生きるのが上手いのよ。
どうして私はこんなにも……生きるのが下手なのかな。
「お姉ちゃんご飯は?」
『いらない』
「痩せるつもり?」
『あんたと一緒にしないで』
「ちょ、妹にむかってなんて口!」
バタンッ
美意識が高い妹は自分が他人より劣ってることを極度に嫌う。
そんな妹の嫉妬の目は気持ち悪い。
ここに私の居場所なんてない。