季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
私…早苗さんの事が好きなのかな?

それとも甘やかされて勘違いしてるだけ?

疑問形になると言う事は、まだそんなにハッキリとした感情ではないんだと思う。

だけど確かに私は、早苗さんを男の人として意識している。

好意を寄せてくれている事は、素直に嬉しい。

早苗さんなら、きっと私を大事にしてくれると思う。

少なくとも、壮介みたいに私を騙したり裏切ったりはしないだろうとも思う。

でも…やっぱりまだ、これを恋とは呼べない。

この気持ちを恋と呼ぶにはまだ不確かで、何かが足りない。

そんな気がする。

それが何であるかは、私自身にもまだわからないのだけれど。




早苗さんと手を繋いでたくさんの動物を見てまわり、パーラーでお茶を飲みながら休憩などもして、久しぶりの動物園を楽しんだ。

グッズショップに立ち寄ると、早苗さんは私にキリンやライオンのぬいぐるみを抱かせた。

「ふふ…フワフワ。かわいいですね。」

ぬいぐるみなんてこれまた何年ぶりだろう?

「買ってあげようか?」

「…子供扱いしてます?」

「ん?してないよ。単純に、ぬいぐるみ抱いてる朱里がかわいいから買ってあげようかなぁと思っただけ。」

もう…まただよ…。

「イヤだった?」

「イヤじゃないですけど…。」

「また赤くなってる。照れ屋さん。」


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