季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平は部屋の入り口で私を見下ろしている。

「こっそり聞き耳たててたのか?」

私は慌てて布団をはね除け起き上がった。

「んなっ…!!そんなわけないでしょ!!聞こえないように布団の中で耳塞いでたのよ!!って言うか勝手にドア開けないで!!それに…!!」

「なんだよ。俺の部屋で俺がやる事に文句あんのか?」

それを言われると…。

「それはそうだけどっ…!どうせならそういう事は私にはわからないようにやってよ!!」

「今夜はマスターの家に泊まるんじゃなかったのか?」

「そんなわけないでしょ?!私、そんな事一言も言ってないじゃない!!」

「ふーん…。今日は帰って来ないと思ってた。一緒に暮らしてる女が急に帰ってきたから帰れって言ったら、あの女怒って帰った。」

「…当たり前だよ…。」

ホントに最低だ、この男…。

「とりあえず、私はお風呂に入りたいの。」

「一緒に?」

「んなわけあるかっ!!出るに出られなくて困ってたの!!もうあっち行って!!」

立ち上がり順平の体を両手でぐいぐい押すと、順平が急に険しい顔をして、私の腕を掴んだ。

「……マスターの香水の匂いがする。」

「えっ?!」

「匂いが移るような事してきたんだ。」

「バカッ!!…って言うか関係ないでしょ?!アンタには言われたくないよ!!」


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