季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平の手が、痛いほど私の腕を強く掴む。

「来い!!」

乱暴に私の手を引いて、順平は浴室に向かう。

「痛いよ、離して!」

順平は私を投げ出すように浴室に押し込んで、シャワーのレバーを捻り、私に頭から冷たい水を浴びせた。

「きゃぁっ…冷たい…!!やめてよ!!」

「うるさい!!」

どんなにやめてと言っても、順平は水の勢いをゆるめない。

どうしてこんな事をするのか、なぜ順平が怒っているのかわからないけれど、冷たくて、悲しくて、涙が溢れた。

「お願い、やめて…。なんで…?なんでこんな事するの…?」

順平はようやく水を止めて、シャワーヘッドから手を離した。

ガタンと大きな音をたててシャワーヘッドが床に転がる。


順平はしゃがみこんで私を抱きしめた。

「なんで…?聞きたいのはこっちだよ…。なんでそうやって…俺から離れて行こうとするんだよ…。」

「えっ…?」

「もう…他の男のところになんか行くな…。」

…何言ってるの…?

「あんなに好きだって…ずっと一緒にいようって言ったじゃん…。なのに急にいなくなって…俺がどんだけ心配したと思ってんだよ…。」

まさかそんなわけない。

でも…もしかしたら…。


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