季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
何を思ったか順平は、脱衣所のカーテンを勢いよく開けた。

私は驚いて順平に背中を向けた。

「っ…!!なんで開けるの?!」

「朱里が逃げないように。」

順平は私の体を後ろから抱きしめて、うなじに唇を這わせた。

「やっ…ダメ…。やめて…。」

「やめない。」

順平の唇がうなじから肩、肩から背中へとゆっくり降りていく。

「朱里…。」

順平の唇からもれた吐息が背中にあたり、全身がゾクゾクと痺れた。

「んっ…。」

耐えきれず声をあげてしまう。

順平の腕の中で甘い疼きに抗う事もできず、気が付けばバスタオルを外されていた。

大きな手で胸に触れられビクリと肩が震えた。

「ダメ…やめて…。」

「やめない。朱里が他の男のところになんか二度と行けないように、俺の手でめちゃくちゃにする。」

順平の手が肌を滑り降りて、その指先は私の中へと入り込もうとした。

流されそうになる理性を必死でたぐり寄せ、私は順平の手を掴んだ。

「もうやめてよ…お願いだから…。」

「…なんで?」

「こんなの…あの頃の…私が好きだった順平じゃない…。」

突然首の付け根に痛みが走った。

「いたっ…!!」

順平が私の首の付け根に噛みついたのだ。

「あの頃と違うのは当たり前だろ。勝手にぶっ壊したのは朱里じゃん。俺は…!」

そこまで言って口をつぐんだ順平は、肩を震わせ拳を握りしめている。

「順平…。」

「…もういい。マスターのとこにでも、どこにでも勝手に行けばいいだろ。」




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