季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平と付き合っていた事や、不安に耐えきれなくなり黙って順平の前から姿を消した事。

それから間もないうちに知り合った壮介と付き合い始めた事。

そして昨日順平から聞いた、私がいなくなってからの事を話した。

早苗さんは驚いていたけれど、何も言わず真剣に話を聞いてくれた。

これまでの順平との経緯をすべて話すと、早苗さんは私の顔をじっと見た。

「それで朱里は…どうするの?」

「……ごめんなさい…。」

私は早苗さんから目をそらし、自然とそう言っていた。

「順平が好き?」

「……ハイ…。」

「無理してない?」

無理なんてしていないと言いたいのに、これ以上何か話すと泣いてしまいそうで、ただ黙ってうなずいた。

「ホントは迷ってるだろ。朱里は嘘つくのヘタだから、なんにも言わなくてもわかるよ。」

見透かされてる…。

でもそれを認めるわけにはいかない。

「朱里が本当に順平の事が好きで、一緒にいて幸せなら俺がとやかく言う事じゃないと思ってる。でも、今の朱里は全然幸せそうには見えない。朱里の迷う理由が俺なら…黙って身を引くわけにはいかないよ。」

「迷ってなんかない…。もう、決めたんです。順平と一緒にいるって…。」

早苗さんは大きなため息をついた。

「俺はただ朱里の気持ちを大事にしたかったんだけどな…。こんな事なら大人ぶって待つなんて言うんじゃなかった。あのまま連れて帰れば良かったな。」



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