季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
思うに別れて泣き、思わぬに添うて愁う
あれから2週間。

早苗さんと会うのを避けるために店を辞めようと思ったけれど、店長に頼み込まれカフェでのバイトは続ける事になった。

バーでのバイトも続けて欲しいと言われたけれど、早苗さんと会うのがつらくて断った。

順平もバーのバイトを辞めてしまったので、新しいバイトの男性を雇ったらしい。

カフェでの仕事が終わる時間、たまに早苗さんが事務所に来ている時があるけれど、できるだけ顔を合わせないようにしている。

今はまだ早苗さんと会うのはつらい。

“嘘つき”と言った早苗さんの声が、あの日からずっと耳の奥で私を責める。


あんなに好きだった順平とまた恋人同士に戻れたのに、私の中の違和感は拭いきれない。

相変わらず順平はバイトで忙しいのか、朝早く出て行って、夜遅くまで帰らない。

なんのバイトをしているとか、どこで働いているとか、順平の事は今もよく知らない。

部屋も別々だし、一緒にいる時間も少ない。

順平が時々、眠っている私の体を求めて布団に潜り込んでくる以外は、以前とあまり変わらないように思う。

順平は私が寝ていても体を弄って起こし、割と強引にセックスをして、その後はさっさと自分の部屋に戻って寝る。

そんな時、この人は本当に順平なのかと思う。

昔はそんな事は絶対しなかったのに。

そこに愛情は感じられず、性欲を満たすためだけにそうされているようで、なんだか虚しい。





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