季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
私がバーのバイトを辞めてから、あっという間に1ヶ月が過ぎた。

順平とは相変わらずだし、早苗さんとも会っていない。

カフェとファミレスのバイトだけで一日が過ぎて行く。

丸一日バイトが休みの日なんてないし、どちらかのバイトが休みでも、だいたいは掃除や洗濯を済ませて部屋でぼんやりしている。

順平がどこかに行こうと誘ってくれる事もないし、部屋でゆっくり二人で過ごす事もない。

壮介と暮らしている時もこんな感じだった。

…いや、壮介との方が一緒に過ごす時間は多かったし、会話もそれなりにしていたと思う。

そういえば、壮介と紗耶香の子供はもう生まれたのかな。

どうでもいいと言えばどうでもいいけど。




カフェのランチタイムのピークを過ぎて賄いを食べた後、新しいランチメニューの考案と試作をしたいから残ってくれないかと店長に言われた。

今日はファミレスのバイトが休みだし、時間ならいくらでもある。

ファミレスのバイトがない分、カフェで時給を稼いで帰ろう。


賄いを食べた後、店長と一緒に新しいメニューをいくつか考えた。

前のメニューにあった揚げ物のソースを変えたり、一度にたくさんできる煮込み料理や、新しいパスタのメニューを考えたり。

家で料理をしない分、カフェであれこれ考えるのは楽しい。

家で料理をしても、外で食事を済ませてくる順平は食べてくれないから、自分一人のためだけに作るのは簡単な物ばかりだ。

一緒に暮らしていても、手料理も食べてもらえないなんて寂しい。


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