季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
応接セットのソファーの後ろで、何かがモソリと動いた。

「あーあ。」

誰かの大きな欠伸が聞こえた。

「だっせぇ。男に逃げられてやんの。」

「えっ?!」

誰?失礼な!!

その男はムクリと起き上がり、大きく伸びをした。

「結婚式の直前に捨てられるとか超マヌケ。」

「なっ…!!」

あまりの失礼さに私が言葉を失っていると、男はククッと意地悪く笑いながらこちらを見た。

綺麗に顔立ちの整った若い男が、人をバカにしたような目で私を見る。

その顔には見覚えがあるような気がする。

いや、間違いなく覚えている。

「被害者ぶるのやめたら?自分にも原因があるとは思わない?」

なんでアンタにそんな事言われなきゃいけないの…?

悔しくて情けなくて、肩が震える。

来るんじゃなかった、こんなところ。

「こら順平、失礼だろ。」

電話を終えて戻って来た佐倉社長が、失礼なその男の頭をはたいた。

「堀田さん、申し訳ありません。うちの若いのが失礼な事を…。」

「ホントの事じゃん。こいつに原因があったから、その男は別の女を選んだんだよ。」

「順平、口を慎め!」


最悪だ。

こんなところでまた会うなんて、思ってもみなかった。


かつて私が捨てた、この男に。











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