季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「朱里との結婚が決まったのは紗耶香と別れた後だ。別れてからはずっと会ってなかった。」

「じゃあ…紗耶香から妊娠してるって聞かされたのはいつなの?」

「結婚式の10日前かな。もうお腹もかなり大きかったし、俺の子だって言うから…。」

…と、いう事は。

壮介が別れ話をした時の3日前に彼女の妊娠がわかったというのは、ホントなんだ。

「ねぇ…。私と別れる2ヶ月くらい前には紗耶香と入籍してたんじゃないの?」

「はぁ?そんなわけないよ、第一その頃はまったく会ってなかったのに!入籍したのは朱里と別れて1ヶ月近く経ってから。別れ話した翌日っていうのは俺がついた嘘だ。」

「そうなの?」

だんだん混乱してきた。

「あの“みいな”とかいう人は?」

「ああ…。あれ、サクラってやつだよ。さすがに朱里の友達と浮気してたとは言いづらかったから…。妊娠してまだ間もないって設定で。」

「もしかして…佐倉代行サービス?」

「ああ、それ。知ってんの?」

「うん、ちょっとね。知り合いが…。」

元は順平もサクラだったという事は黙っておこう。


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