季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「あのさ…ちょっと混乱してきた。ちゃんと整理しよう。私たちが結婚する予定だったの、9月中旬だよね。別れたのはその1週間前。で、今は12月半ばになる。」

「うん。朱里と別れてから3ヶ月…まだそんなもんか。」

「紗耶香から妊娠したって聞いたのは?」

「9月の初めだったかな。」

「壮介、紗耶香と一度は別れたって言ったよね?付き合ってたのはいつなの?」

「去年の秋から付き合ってたかな…今年入って1月の終わりに別れた。」

「そこからずっと紗耶香には会ってなかったんだよね。」

「うん、間違いない。だいたい俺、年度末から仕事忙しくて、休みの日なんかずっと家で寝てたじゃん。一緒に暮らしてた朱里ならわかるだろ。」

「まぁ…そうだよね。で、子供は11月の最初に生まれたと…。ん?」

指折り数えて、そんなはずはないと何度も確かめてみる。

「どうした?」

「いや…あれ?ちょっと待って。」

バッグからスケジュール帳を取り出し、もう一度数えてみる。

「壮介…おかしいよ。嘘ついてない?」

「はぁ?嘘なんか一切ついてないよ。ここまで来てごまかしてどうすんだ。」

私は気付いてしまった。

もし壮介の言った事が本当なら…。

「どうした?何がおかしいんだ?」

「うん…。」


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