季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
確かな証拠もないのに、こんな事を軽々しく言ってもいいものだろうか?

私の勘違いか、それとも壮介の記憶が曖昧だったのか。

「あの…変な事聞いていい?」

「ん?なんだよ。」

「壮介さ…私とは避妊、欠かさなかったじゃない?私とはデキ婚とか有り得ないって思ってたから?」

「はぁっ?!」

「紗耶香とは子供ができてもいいから、避妊しなかったの?」

「ばっ…バカか?誰が相手でも簡単にできていいとか思ってないし、紗耶香ともちゃんと避妊はしてた!朱里と結婚するつもりだったってさっきも言っただろ?朱里とだって結婚して落ち着いてから子供が欲しいって思ったから欠かさなかっただけで…。」

知らなかった。

壮介は壮介なりに考えていたんだ。

私と結婚したくなかったとか、紗耶香となら子供ができてもいいと思ってたとか、そういうわけじゃなかったんだな。

「じゃあなんで紗耶香は妊娠したの?」

壮介は一瞬驚いた顔をして、気まずそうに目をそらした。

「なんかな…失敗したらしい。そん時は気付かなかったんだけど…途中で破れたか穴が空いてたみたいで…。って…なんで俺、朱里にこんな話しなきゃいけないんだよ…。これ拷問なのか?もう勘弁してくれよ…。」

歯切れの悪い返事をして、壮介は心底弱った顔をしている。


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