季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
私は少しでも順平に歩み寄ろうと、努力はしているつもりだ。

でも順平はそれを疎ましがっているような気がしてならない。

何度か料理を作ったけれど、順平は黙々と食べるだけで、美味しいとも言ってくれなかった。

順平が好きだったはずの料理を作っても、反応は薄い。

この前なんか、順平が好きだったアスパラとニンジンを牛肉で巻いて焼き肉のタレに絡めて焼いたのを作ってみたけれど、アスパラは嫌いだと言って、アスパラだけ残された。

順平、味覚まで変わったのかな?

昔は美味しいって食べてくれたのに。

一緒に過ごすほど違和感が大きくなる。

そしてその違和感を感じるたびに、この人は本当に順平なのかと疑ってしまう。

だけど名前も顔も、確かに順平だ。

それはそうそう変えられない。

私と順平だけが知っている事、何かあったかな?

いろんな事がモヤモヤと心に引っ掛かったままで、時間だけが過ぎて行く。

確かめてみたいような、知りたくないような複雑な気持ち。

そうとはいえ、このままでいるわけにもいかない。

何かきっかけさえあれば、真実の扉は開くかも…なんて、大袈裟か。


ただ、その真実の扉が開いた時に、私たちはどうなってしまうんだろう?









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