季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
早苗さんはミルクティーを一口飲んで、ためらいがちに口を開いた。

「あのさ…朱里には酷な話するよ。いい?」

「…ハイ。」

「あいつ…他にも女がいる。一人や二人じゃないよ。朱里と付き合い始めた後も、それは変わってないみたいだ。順平が女と一緒にいるの俺も何度か見てるし、俊希もそう言ってた。」

…やっぱり。

そんな気はしてたんだ。

「昔からそうだったわけじゃないですよね。」

「3年くらい前に、一生懸命舞台の稽古してたのに、急に来なくなったらしい。それまでの順平は明るくて優しくて素直で、すごくいいやつだったって。主役で舞台に立つのを彼女に見せたいって言って、すごく頑張ってたって。」

私の好きだった順平だ。

いつも一生懸命頑張っていた順平の笑顔は、今でも忘れない。

「その彼女って…朱里の事だよね?」

「…そうだと思います。」

「それから半年くらい経って、突然フラッと現れて…朱里の居場所を知らないかって、何人か聞かれたらしい。その時には随分雰囲気が変わってたから、みんなビックリしたって。その時に佐倉社長がサクラの仕事しないかって誘ったらしい。」

それからの順平は劇団に戻る事もなく、人と関わる事を避けていたようだったと、佐倉社長は言っていたそうだ。

私と離れてから何があったのかは、順平にしかわからない。


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