季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
少し寒そうに身を縮めている順平にブランケットをかけて、私は自分の部屋で荷物をごそごそと漁った。

ずっと捨てられなかった順平との思い出の品はどこにやっただろう?

「あ…あった…。」

テーマパークのお土産にもらったお菓子の缶の蓋をそっと開けた。

これを開けるのは3年ぶりだ。

順平からの手紙や二人で撮った写真、順平が出演した舞台の半券。

プレゼントはネックレスだけだったから、思い出の品として残しておけるものはほんのわずかだった。

缶の中から写真を取り出してみた。

写真の中の順平は、あの頃のまま、私に優しく笑いかける。

誕生日にくれた手紙を読み返すと、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。


ごめんね、順平。

順平の事、大好きだった。

ずっと一緒にいようっていつも言ってくれたのに、私は目の前から急に順平がいなくなってしまうのが怖くて、逃げ出してしまった。

順平の事、ずっと忘れた事なんてなかった。

でも、もうやり直せないのはわかってる。

だから私は、どんなにつらい現実も、私自身の弱さも、すべてを受け止めて前に進みたいの。

順平はそれを許してくれるかな?






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