季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平との思い出の中で涙を流していると、それを覆うように私の後ろから影が伸びた。

「…何してんの?」

「…順平と話してた。」

「え…?」

私は涙を拭って振り返った。

「私の好きだった順平と、話してた。」

「……。」

順平は床の上に広げられた写真をじっと見つめている。

「あのね…順平が、私の好きだった順平じゃない事はわかってる。」

順平はそっと目をそらした。

「…なんでそんな事言うんだ?」

私は襟元からネックレスを出して、順平に見せた。

「だって…このネックレスはね…いつもお金がなかった順平が一生懸命お金を貯めて、唯一私にプレゼントしてくれたものなんだよ。それを順平が忘れるわけないよ。それに…私には髪の長いメガネの美和なんて友達いないよ。だからもちろん順平も会った事はない。」

「嘘ついたのか…。」

「それはお互い様でしょ。」

順平は右手で目元を覆って大きく息をついた。

「私はホントの事が知りたいの。お願い、今度こそホントの事を話して。」

「……わかった。」


これから順平から聞かされるのがどんなにつらい話だったとしても、私はもう逃げない。

今度こそすべてを受け止めよう。






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