季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平は自分の部屋から何かを持ってリビングに戻って来た。

それをテーブルの上に置いて、開けてみるように目で私に促した。

順平はソファーに座って膝の上に肘をつき、両手をギュッと握りしめている。

私はテーブルの上に置かれた紙袋を手に取り、中の物を取り出した。

何枚かの写真とくしゃくしゃになった封筒。

「あ…。」

写真にはそっくりな男の子が二人写っている。

「これ…順平と…。」

「こっちが俺。こっちは…弟の陽平。」

「双子…なんだね。」

「オマエが付き合ってたのは…陽平だ。」

何枚かの写真を見ていると、そっくりではあるけど成長とともに二人の雰囲気が違ってくる。

「なんで…順平って名前…。」

「陽平は高1の頃に白血病になって…病気のせいで高校にもほとんど行けなかった。一度は病気が治って、普通の生活ができるようになったけど…いつまた再発するかもわからないからって言って…いつそうなっても悔いが残らないように、自分のやりたい事するって。」

「それがお芝居だったの?」

「そう。中学の時に演劇部だったから。頑張って演劇部の有名な高校に入ったのに、結局行けずに中退したから、劇団に入って芝居やりたいって。親は反対したけど、どうしてもやるって聞かなくて19の時に家出した。」

「家出…。」


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