季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
お墓参りを終えた私と順平は、駅のそばの定食屋で食事をした後、再び電車に乗って家路に就いた。

マンションに戻り、コーヒーを淹れて順平と二人で飲んだ。

「それで…オマエはこれからどうするの?」

「これから?」

「もう一緒に暮らす必要なんてないだろ。俺も陽平の事はオマエに全部話したし…。」

「うん…そうだね。順平はどうするの?」

「俺は…オマエが出てくなら、ここ引き払って地元に帰る。もうここに用はないからな。」

「彼女がたくさんいるんじゃないの?」

「ああ…。あれは仕事だ。金もらってデートするやつ。オプションでホテル行ったりもしたけどな。」

うわ…この男は…。

「双子でも全然違うんだね。」

「俺は昔からモテたからな。手っ取り早く金になる仕事はそんなもんしかなかったし。」

なんとなくこういうところは順平らしい。

「地元に帰ってどうするの?」

「さあな…どうにかなんだろ。オマエは?」

「どうしようかな…。」

「マスターは?オマエも好きなんだろ?」

順平に意表を突かれ、ドギマギしてしまう。

「ん?うん…。でも…。」

「遠慮する事ないぞ。向こうも本気みたいだしな。まぁ…オッサンだけど。」

「オッサンじゃないよ、大人なの。」

早苗さんとはあれから会っていない。

順平の事は自分でなんとかするから、しばらく見守っててと私が言ったから、何も言わずにそっとしておいてくれているようだ。


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