季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
……とりあえず、壮介の事はおいといて。

いくらなんでも順平と暮らすなんて…とは思うけど、“出るよ”と言われた場所に一晩中一人でいるなんて絶対に耐えられない。

しかも一晩どころの話じゃない。

どうしよう…。



何も言い出せないまま、確実に夜は更ける。

どうしよう、ひとりになるのが怖い。

なんか変な汗が出てきた。

でもここしか頼る場所はないんだから。

ビビったら負け、眠っちゃえばきっと大丈夫。

だけど眠る前に何か出てきたらどうしよう?!

眠ってても起こされるかも知れない!!

シャワーとかトイレとか…怖すぎる…。

ダメだ。

やっぱり一人で耐えられる自信がない。

「朱里ちゃん、閉店待ってなくても、好きな時間に事務所に行っていいんだよ。」

「そ…そうですね…。」

マスターの気遣いは嬉しいけれど、出ると知ってしまった以上、私には事務所で一人になる勇気はない。

「俺らがいると落ち着いてシャワー浴びたりしづらいでしょ。」

「それは…そうなんですけど…。」

いや、逆に誰もいない方が落ち着いてシャワー浴びたりできないよ!!

「もう少ししたら行こうかな…。」


オバケが怖くて行けません!!とも言えず、グラスに残っているモスコミュールを、チビチビ飲みながら閉店時間を待った。




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