季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
それから私は食事会の会場に都合のいい店を調べ、挙式日だった日に人数分の予約をした。

料理も安っぽいコースではなく、真ん中よりひとつ上のランクの、それなりの物を選んだ。

痛い出費。

壮介に払ってもらいたいくらいだ。

仕方がないからカードで分割払いにした。

そして招待していた親戚に電話をして、その都度母親に話したのと同じ事を何度も話した。

惨めだった。

だけど“婚約者に捨てられたから結婚話はなくなりました”と言うよりはましだと思う。

ようやくすべての親戚に電話を終えた時には、お昼を過ぎていた。

道理で賑やかなはずだ。

私もランチを注文しようかと思ったけれど、テーブルの下でコソッと財布の中を覗き、とりあえずカフェラテのおかわりを注文した。



私は震える手でカップを持って、カフェラテを飲む。

思っていたより現実は厳しい。

親戚はみんな何か言いたげだった。

だけどそれを口には出さず、私や壮介の父親の心配をしているふりをした。


“結婚を延期するなんて言って、本当は別れるから、このままなかった事にするつもりじゃないの?”


うわべだけの優しい言葉の裏で、そんな冷ややかな言葉が聞こえた気がした。

それは私の心にある後ろめたさから来る物なのかも知れない。

こんな事で怯んでどうする。

絶対にこの嘘をつき通すって決めたんだ。

もっと強い心で、毅然としていなくちゃ。


責めるなら壮介を責めて。

私は何も悪くないんだから。


< 33 / 208 >

この作品をシェア

pagetop