季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
カフェを出た私は、生活に必要な最低限の物だけを買って、順平のマンションに戻った。

とてもじゃないけど、布団を買う余裕はなかった。

順平にお願いして、しばらくの間貸してもらうしかない。


カフェを出る前に派遣会社に電話してみたけれど、私の条件に合う職種の仕事は、今は紹介してあげられる会社がないと言われた。

とりあえず営業の人が仕事を見つけてくるまで待つしかないようだ。

だけどぼんやり待っているわけにもいかない。

なんでもいいから仕事を探さなくちゃ。


時給の高い仕事を求めて、シャンプーなどを買ったドラッグストアで見つけて持ち帰った、無料のアルバイト情報誌のページをめくる。

できれば交通費のかからない近場がいい。

深夜の飲食店とか、閉店後の大型スーパーの清掃とか、早朝のスーパーの品出しとか…。

結構な肉体労働ばかりだ。

体力的にもつかな、とも思うけど、やらなきゃどうにもならない。


どこから電話していこうかとページをめくった時、いつものカフェの名前を見つけた。

カフェだけでなくバーのアルバイトも募集している。

後光が差して見える!!

私は慌ててスマホを手に取り、早速電話を掛けた。



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