季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
シャワーを終えてリビングに戻ると、順平はまだソファーでビールを飲んでいた。

私も飲みたいなぁ…ビール。

でも今はビールを買う余裕はないから、コンビニで迷ったけど我慢した。

私がソファーのそばを通り掛かった時、順平が私の腕を掴んで引き寄せた。

「うわっ!!」

その勢いで私は、順平にダイブする。

「いったぁ…。なんなの、もう?」

顔を上げると、順平は私の顔を覗き込むようにして、意地悪く笑っている。

近い、近過ぎる!

「俺、オマエの婚約者のフリすんだっけ?」

「そうだけど…あくまでフリよ、フリだけだからね?」

「ふーん…?じゃあ、婚約者らしく振る舞う練習でもしてみるか。」

順平はニヤリと笑って、私をソファーの上に押し倒した。

「ちょっと!冗談やめてよ!!酔ってるの?!」

「そうだなぁ…。シラフじゃできねぇか。だったらオマエも飲め。」

「はぁ?!」

順平はビールを口に含んで、私の頭を強引に引き寄せた。

そして口の中のそれを、口移しで私の口に流し込んだ。

「んんっ…!」

順平は重なった唇を離そうとせず、ビールの味のする舌先で強引に私の口を開かせ、舌を絡め取った。

あの頃とは違う強引で大人の味のするキスに、私の体から力が抜けそうになる。

順平は唇を離して、そんな私を鼻で笑った。

「エロい顔。誰にでもそんな顔すんだな。婚約者にもずっと触ってもらえなかったんだろ?もっとしてやろうか?」

「……バカッ!!」

私は慌てて順平から離れ自分の部屋に戻った。





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