季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「彼氏も同じくらいの歳なの?」

ひとつ尋ねてやると、恵梨奈は嬉々として10ほど答える。

この子の扱いがわかってきた。

「彼氏は5つ歳上の26歳なんです。すっごくカッコいいんですよー!!」

「付き合ってもう長いの?」

「まだ3ヶ月くらいです。」

「じゃあ一番盛り上がって楽しい時期かな。」

「それがね、彼すっごく忙しくて、なかなか会えないんですぅ。」

「そうなんだ。ちょっと寂しいね。」

「この間もね…。」



ああ。

どうでもいい。

人のノロケ話ほどバカらしい物はないわ。


私は作り笑顔の下に本心を隠して、下らないノロケ話に耳を傾けているフリをした。

しかしそろそろ我慢も限界だ。

バイトの終わったあなたと違って、私には賄いを食べた後もまだ仕事が残ってるの。

そろそろ解放して欲しい。


「ねぇ、時間は大丈夫?早く食べて着替え済ませないと、彼氏待たせちゃうんじゃない?」

私はわざとらしく壁時計をチラッと見た。

恵梨奈も同じように壁時計を見上げる。

「あっ、ホントだ!!」

しめしめ、うまくいった。

「遅刻したら、順平くん怒って帰っちゃう!!」



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