季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
カフェでの仕事が終わった私は、店長の淹れてくれたカフェラテを飲みながら、レシピノートをめくっていた。

バーの仕事が始まるまで、特に行く場所も予定もない。

壁際のカウンター席で、のんびりカフェラテを飲んで寛ぐ至福のひととき。

これで煩わしい現実がなければ最高なんだけどな。



やるべき事はすべてやったはず。

結婚式に招待していた友人にも、一人一人連絡を取って事情を説明した。

ひとつ気掛かりなのは、結婚式の招待状の返事がなかった親友の紗耶香の事だ。



私には二人の親友がいる。

初めて勤めた会社で知り合った、同期の志穂と紗耶香。

新入社員研修で出会った時からすぐに仲良くなり、いつも一緒に仕事をして、よく3人で食事に行ったり家を行き来したり、いろんな話をした。

その会社を一番先に辞めたのは私。

順平との別れを決め、もう会わないようにと少し離れた場所に引っ越して、ついでに前から気になっていた仕事に必要な資格を取る勉強をするために会社を辞め、派遣の仕事をしながら勉強を始めた。

その後しばらくして、志穂は夢だった語学留学とファッションの勉強をするため退職し、会社には紗耶香だけが残った。

最後に3人で会ったのは、私が壮介と一緒に暮らし始めてから半年ほど経った頃、志穂が留学する直前だったと思う。

志穂とは今でもたまに電話やメールで連絡を取ったりはしているけど、紗耶香とは次第に連絡を取る回数が減って、ここ最近は電話をしても繋がらないし、メールをしても返信がない。

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