季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「そんな物欲しそうに見んな。」

「誰がアンタなんか…。」

「へぇ?夕べは今にも襲い掛かりそうな顔してたけどな。」

やっぱ覚えてたか。

「冗談やめてよ。私は彼女持ちの男をどうこうする趣味はないの。」

「彼女持ち?」

なんの事かと言いたげに順平は顔をしかめた。

「いるんでしょ?今日、アンタの彼女本人から聞いたけど。」

「彼女なんていないけど。」

なんでしらばっくれるかな。

「そういう嘘はいいから。恵梨奈に聞いた、付き合って3ヶ月だって。彼氏が忙しくてなかなか会えないって言ってたけど。」

「ああ、あいつか…。」

ほれごらん。

あっさり認めたじゃない。

「あれ、彼女じゃない。」

「は?」

「付き合うとか一言も言ってないし。」

「えぇっ?!でも今日デートだったんでしょ?」

「デートじゃない。彼女じゃないから。」

「でもそれ…。」

私が胸元についたキスマークを指差すと、順平は悪びれもせず涼しい顔をした。

「ちょっと時間があったからホテル行って、やることやって別れたけど。」

「はぁ?!」

「あいつ、なんか勘違いしてんな。こんな目立つとこにこんなもんまで付けて…。めんどくさいからもう会うのやめよ。」


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