季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
浮気防止も何も、彼女と思われてないんだよ。

独占欲を剥き出しにして縛り付けようとすればするほど、面倒な女だって言って順平は離れていくのに。

…なんて、絶対言えないけど。

それでも体だけとは言え、順平は恵梨奈を求めたわけだ。

求められているのは体だけとは知らなくても、恵梨奈は順平に求められて喜んでる。

本当の事は知らない方が、恵梨奈にとっては幸せかも知れない。


「店長から聞いたんですけど、朱里さん、バーでもバイトしてるんですよね?」

「え?うん、してるよ。」

猛烈にイヤな予感がする。

「順平くんって、バーでバイトしてる順平くんなんです。」

「あ、そうなんだね。」

ハイ、存じておりますよ。

「今日は順平くんの仕事してる姿、見に行っちゃおうかなぁ。それで、酔ったから今夜泊めてって言っちゃおうかなぁ。」

やめときなって。

何言われるかわかんないから。

…って言うか、順平が断ってくれないと、私が困る。

順平の部屋に居候している事は恵梨奈には知られたくないし、いくら部屋が別々とは言え、リビングの向こうのドア1枚隔てた先で順平と恵梨奈が…とか、絶対無理。

声とか絶対聞こえるよね?

「そうしよ。朱里さんも働いてる事だし?」

えっ?なんでそうなるの?!

私は関係ないのに…。

面倒な事にならなきゃいいけど…。






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