季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
順平はマスターには逆らえないのか?

何か弱味でも握られているんだろうか。

「順平、この店に勤めてもう長いですか?」

「そうでもないよ。まだ1年くらい。」

「そうですか。その割になんと言うか、順平はマスターに対してもタメ口だし、遠慮がないですね。」

「ああ、あいつ最初からあんな感じなんだよ。佐倉社長の紹介でうちの店に来たんだけどね。ちなみにカフェの店長は俺の嫁の弟。」

「義理の弟さんですね。道理で似てないと思いました。」

「嫁って言っても、随分前に離婚してるんだけどね。もう8年になるな。」

別れた奥さんの弟と一緒に仕事してるのか。

なんか複雑。

結婚はゴールじゃないってよく言うけど、それは本当かも知れない。

私と壮介だって、結婚してもすぐに離婚する事になっていたのかも。

そう考えると、結婚って一体なんのためにするんだろうかと思ったりする。

それに向かって必死になっていた私はバカみたいだ。

今度こそは私だけを愛してくれる人を見つけよう。

間違っても浮気なんかしない人を。

できれば、私も一生本気で愛せる人がいい。

義務とか責任とかそんなものだけでなく、ちゃんと心から愛せる人と、いつかは結婚して幸せになりたい。

そんな日が来るのは、一体いつになるだろう?







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