季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
食事会の会場になっている寿司懐石の店に着いて、私が親戚に挨拶しているうちに、順平はいつの間にか姿を消していた。

トイレにでも行ったのかな。

そう思っていたのだけれど、時間になっても順平は戻って来ない。

どうしよう。

両親も親戚も、“壮介”がなかなか姿を見せない事を、さすがに不審に思い始めている。

「緊張してるのかな…。ちょっと、様子見てきます。せっかくだからお料理が温かいうちに、皆さんは先にお食事始めてて下さい。」

そう言って私が席を立って個室の外に出ようとドアを開けた時。

そこには偽壮介ではなく、本物の壮介が立っていた。

「遅くなってすみません。」

え……?

なんで?どういう事?!

壮介は個室の中に入ると、両親と親戚に深々と頭を下げた。

「申し訳ありません。僕の父の病気のために結婚を先送りにすると言うのは、嘘なんです。」

両親も親戚も、呆気に取られている。

なんで壮介が、私がこの嘘をつくために親戚を集めた事を知っているのだろう?

頭の中が真っ白になり、私は呆然と立ち尽くしたまま壮介の背中を見つめていた。

「僕の口から、本当の事をお話しします。」





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