季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
それから壮介は、私との結婚が決まっていたのに別の女性を好きになってしまい、その人が自分の子を身籠ったので、責任を取るため私との結婚はできなくなったと言った。

挙式予定日の直前に彼女の妊娠がわかり、このまま私と結婚する事はできないと、私との婚約を解消したけれど、壮介をかばうために私が両親や親戚に嘘をつく事にしたのだとも言った。

そして、私や両親に本当に申し訳ない事をしたと深々と頭を下げた。

親戚はみんな、何か言いたそうではあったけれど、何度も頭を下げる壮介を、ただ黙って見つめていた。

「今回の責任はすべて僕にあります。本当に申し訳ありませんでした。」

壮介はそう言って両親に頭を下げてから、私の方をむいた。

「朱里…勝手な事してごめんな。でも、朱里だけに嘘をつかせて責任を押し付けるのはイヤだったんだ。」

私は我に返って、壮介の腕を掴み個室の外に引っ張り出した。

「どういう事?!なんでこの事を壮介が知ってるの?」

「昨日…朱里が荷物取りに来てしばらく経ってから、朱里の彼氏が部屋に来た。」

彼氏?

…って、順平の事か!!

「えっ?!なんで?」

「今日朱里がしようとしてた事を教えてくれた。それで、男なら筋を通せって。朱里は嘘をついてまで、一人で俺の投げ出した責任を背負おうとしてるんだって言われた。」

「そんな事言ったの…。」


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