季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「なんか今日は飲みたい気分なんだけど、付き合ってくれる?」

「オマエ、酒弱いだろ。つぶれても店から引きずって帰んのイヤだからな。」

順平に心底イヤそうな顔をされた。

「えー…。」

「リビングから部屋までくらいの距離なら引きずってやらなくもない。」

引きずるって…。

私、一応女なんだけど…。

「引きずらずに抱えて欲しいんだけど。」

「重たいからイヤ。」

口が減らないな、順平は。

「まぁいいや…。じゃあ、家飲みにしよ。ビールおごるよ。」

「当たり前。」

「じゃあ、コンビニ行こう。」

「めんどくせぇな。」

「おつまみもおごるから、ね?」

「しょうがねぇなぁ…。」

順平と軽口を叩きながら並んで歩く。

なんだかとても楽しい。

順平とは恋人でも友達でもないけれど、これはこれでいいんじゃないか。

私たちにはこれがちょうどいい距離感なのかも知れない。



とりあえずシャワーを済ませてから、二人で飲み会を始めた。

私はいつもより多目にお酒を飲んだ。

なんだかとってもいい気分になり、いつもよりたくさん話したと思う。

順平もお酒を飲みながら、いつもは話さないようなどうでもいい話をした。

酔いが回って来ると、何が面白いのか二人でお腹を抱えて笑ってばかりいた。

とにかく楽しい。

明日になればきっと、何がそんなにおかしかったのかと首をかしげるだろう。

私と順平は、これでもかと言うくらい笑った。


< 83 / 208 >

この作品をシェア

pagetop